信頼性の高い新規構造材料の創出を目指して
材料組織や異方性を積極的に利用することで材料が本来有しているパフォーマンスを引き出すことは、構造材料の高信頼性化や長寿命化、そして限られた資源の有効利用には欠かせません。本研究室では、材料強度学や結晶塑性学、材料組織学をベースとして、金属や合金バルク体およびセラミックスの成膜における変形機構の解明とそれに基づいた組織制御や結晶配向制御を行い、信頼性の高い、長寿命な新規構造材料の実現とそのためのプロセス技術や評価手法の開発に取り組んでいます。
研究内容
研究テーマ1:常温での粒子衝突による緻密質で結晶質なセラミックスコーティングの創生
エアロゾルデポジション(AD)法によって成膜されたセラミックコーティングにより、耐熱材料や工具鋼などの構造材料における耐環境性や耐熱性、耐摩耗性を向上させ、長寿命化の機能を付与した、信頼性の高い材料の新規プロセス技術や評価手法の開発を行っています。
Topics
- 航空機用耐環境バリアコーティングのAD法によるプロセス開発と剥離特性評価
- 金型用硬質膜の補修を念頭に入れたAD法によるセラミック硬質膜の創生とその特性評価
- 粒子衝突による超高温耐熱セラミックス接合体の開発
- AD法による高結晶配向性セラミックコーティングの創生
エアロゾルデポジッション(AD)法について・・・
金属やセラミックの粉末を常温にて高速で基材へ吹き付けることにより、緻密質で結晶質なコーティングの形成がエアロゾルデポジッション(AD)法では可能です。常温成膜のため、基材の劣化は無く、また、粉末の組成がそのまま膜の組成となるため、膜に求める組成の粉末さえ作製できれば、組成変動無しの膜形成が可能です。成膜時の膜の酸化も無いため、非酸化物の成膜も容易です。異なる粉末を混合した後に成膜し、複合材料を作製した実績もあります。近年、粒子の基材衝突による塑性変形が成膜に寄与することから、AD法により金属はもちろんのこと、セラミックにおいても膜の結晶配向が制御可能であることを見出しています。
研究テーマ2:高温加工および加工・熱処理による材料組織および集合組織(結晶配向)の制御
高温加工や加工・熱処理により材料組織や集合組織を積極的に制御することで金属や合金における塑性加工性の向上、室温での破壊抵抗の改善、高温強度の向上など、材料における高信頼性化や長寿命化の実現に取り組んでいます。
Topics
- Ti-Al-Nb系耐熱合金の熱処理に伴う組織制御と力学特性
- Ti-Al-X系耐熱合金の高温加工による組織制御・配向制御技術
- 耐酸化・耐食性を有するMCrAlY中エントロピー合金における高温変形機構の解明
- Mg-Li系合金の単軸圧縮変形および平面ひずみ圧縮変形における組織および集合組織制御
高温加工試験装置について・・・
万能試験機に電気炉を取り付け、高温加工試験装置として利用しています。1台は、大気中で900℃まで材料を加工できます。もう1台は、1000℃を超える温度域において真空中にて材料を加工することが可能です。TZM合金やSiAlON製の冶具を用いることで、単軸圧縮変形のほか、圧延を模擬した平面ひずみ圧縮変形やせん断変形も実施できます。近似的に真ひずみ速度が一定となる試験も可能です。